ケロイドとは
ケロイドは、傷を治すために必要な炎症が過剰に続くことで、線維成分が過増殖して生じます。痛みやかゆみが出現するだけでなく、見た目も気になる非常に不快な病態です。放置しても軽快することはなく、元の傷の範囲を超えて広がっていくという特徴があります。
ケロイドは、誰もが発症するわけではなく、「ケロイド体質」という言葉が示す通り、個人の体質が関連していることが知られています。そのため、遺伝性も認められています。また、症状の程度には個人差があり、ひどく盛り上がる人もいれば、ややミミズ腫れ程度の人もいます。
ケロイドの原因には、手術や外傷、BCG接種痕やピアスなどが挙げられます。その他、ニキビや虫刺されなどの小さな傷でも発症することもあります。
ケロイドの主な症状は、発症した部位やその周辺が赤く腫れて盛り上がり、痛みやかゆみ、ひきつれ感が伴います。発症部位は、前胸部、肩まわり、上腕、下腹部、恥骨上部、耳などに生じやすく、手掌や足底、顔面、頭部、下腿などには発生しにくいといわれています。
ケロイドの治療
ケロイドの治療法は、体質、年齢、状態、範囲、発症部位などによって異なります。治療法を考える上で最も重要なのは、手術が適切なのか、それとも手術以外の保存的治療が適切なのかを明確に判断することです。
以下の特徴を有するケロイドや、保存的治療に抵抗性のある「耳たぶのピアスケロイド」や「へそのケロイド」などは、手術が第一選択となることが多いです。
- 強いひきつれ(拘縮)がある
- 粉瘤や毛の埋入などの感染源がある
- 有茎性である
こうした特殊なケース以外では、手術による悪化や再発が問題となるため、基本的に保存的治療が主となります。
保存的治療
ケロイドの保存的治療では、赤みや炎症を抑えるためにステロイドを含有する軟膏やテープ剤を用います。また、ケロイド内に直接ステロイド注射を行うことで、より効果が得られます。
その他、シリコンゲルシートで圧迫し、血流を低下させて増殖を抑える圧迫療法も有効です。内服薬で効果が見られることもあります。
これらの保存的治療は、単独ではなく、複数を組み合わせて行うことが多いです。
【ケロイドの主な保存的治療】
・外用療法
・局所注射療法
・圧迫療法
・内服療法
・レーザー治療など
外科的治療
ケロイドの手術では、治療後に再発しないよう、縫合方法に工夫を凝らして手術を行います。また、手術後には放射線治療を行うことで再発を抑えることが可能です。
ただし、手術後の傷あとが完全に消えるわけではありませんので、手術を行うにあたっては、患者様に効果や限界について十分なご説明を行っています。
ケロイド手術における縫合
ケロイド摘出後の縫合で最も重要なのは、再発を防ぐために適切に縫合することです。
そのため、ケロイドが生じる真皮に過剰な力が加わらないよう、真皮よりも深い筋膜などの組織をしっかりと縫い寄せます。これにより、傷を取り囲む最も内側の部分(創縁)が自然とくっつく状態になります。そして、真皮縫合と表面縫合は最小限に行います。
手術後は、テーピングによる創部の安静や抗アレルギー薬の内服などで再発を予防します。再発の可能性が高い場合には、連携病院で放射線治療を受けていただき、再発予防を行います。